裁判になった場合の時効の援用

文責:所長 弁護士 白方太郎

最終更新日:2024年08月21日

1 通常の時効援用の手続き

 消費者金融やクレジットカード会社の負債について返済が困難となり、長年放置していますと、消滅時効期間が経過し、時効の援用ができる場合があります。

 この時効の援用について弁護士が依頼を受ける場合、債権者である業者に対し、配達証明付きの内容証明郵便を利用して時効援用通知書を送付します。配達証明付きの内容証明郵便を利用すると、当該業者に対して時効援用の意思表示をしたことと、その意思表示が当該業者に到達したことを証明する証拠になります。

2 裁判になった場合

 借金等の負債は、消滅時効期間の経過により当然に消滅することはありません。

 時効援用の手続きを行ってはじめて消滅することになります。

 そのため、時効援用の手続きが行われた負債については、行政庁の監督を受けている消費者金融会社や債権回収会社が債務者に対し督促を行ったり、訴訟を提起したりすることはありませんが、時効援用の手続きが行われていない場合は、業者側の請求権は存在していることになりますので、大手の消費者金融会社でも督促は行いますし、一部の中小の債権回収会社は訴訟を提起することもあります。

 郵便や電話による督促等であれば、消滅時効期間が経過している負債について時効援用の手続きをせずそれを無視し続けていても、督促等が続くのみで、法律上は何らの変化もありません。

 しかし、訴訟を提起された場合は、民事訴訟法のルールにしたがって対応しないと取り返しのつかないことになります。

3 裁判での対応方法

 例えば既に完済している借金について、裁判で返済を求められた場合、その訴訟手続において、返済が完了していることを主張しないと、裁判官は、判決を出すにあたり、返済が完了しているという事実を判断の基礎とすることはできません(もちろん、返済の事実について主張しても、貸主側がそれを争う場合は、返済の証拠も提出しなければなりません)。

 既に返しているからいいや、と訴訟を放置し、原告である貸主側の請求を認める判決が出て確定してしまうと、もはやこれを覆すことはできず、貸主側は強制執行も可能になってしまいます。

 消滅時効についてもこれと同様で、裁判手続きで消滅時効の主張を行わないと(裁判外で時効援用手続きを行った場合は、その事実を裁判手続き上で主張しなければなりません)、裁判官は消滅時効を考慮することができませんので、原告である業者側の請求を認める判決が出されることになり、これが確定すると、時効は振出しに戻ってしまうことになります(確定から10年になります)。

 もちろん、業者側は給料差押え等の強制執行も可能になります。

 裁判所から書類が届いた場合は、無視せず(不在通知が入っていた場合は直ちに受け取り)、すぐに弁護士に相談してください。

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